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自然布、古代織コラム第一回:葛布について

はじめに

私たちの祖先は自然を崇拝し、その自然からを感謝の念を持って材料となる植物を頂戴し、人の手をもって糸にし、布となして日々の用をなしてきました。
日本は北から南まで変化にとんだ気候風土に恵まれ、世界に例のないほど地域性あふれる織物が現在まで脈々と作り続けられてまいりました。

アットゥシ、大麻、シナ布、藤布、木綿、太布、苧麻、芭蕉布など、その地域・環境に根差した織物、これそこそが私たち古代織産地連絡会の自然布です。このコラムで各産地・それぞれの織物について語っていきたいと思います。

葛布について

皆さんは”葛”と聞いて何を思い浮かべられるでしょうか?

秋の七草の花として、くず粉や葛餅のお菓子、薬として葛根湯などを思い浮かべる方も多いかと思います。
それだけではなく、この葛は古代から布として人々の生活を支える重要なものでした。

確認されている最古の葛布は古墳時代の遺跡から銅鏡に付着した状態で出土しております。
またその古代中国で最上の夏の衣類は葛布とされており、日本でも武家の時代に袴や裃、陣羽織、火事羽織、道中着など多種多様な用途で使われておりました。
現在でも宮中の蹴鞠には葛布製の指貫袴が使われております。

なぜ数ある自然布の中で葛布が使われ続けたのはなぜでしょうか?

葛布の一番の特徴は輝くようなその光沢にあります。

もともと光沢のある葛繊維の特性を生かすため、他産地にはみられない平糸(撚りをかけない糸)を使い、違う素材と組み合わせて織る(交織)という事に特徴があります。
撚りをかけるということは強度が出る反面、密度が高まり固くしまり、光沢も失われます。

刺繍等ではその光沢を生かすため撚りのない糸を使いますが、織物の常識として必ず撚りをかけ糸となします。

やや話はそれますが紬産地で有名な結城がユネスコの無形文化財登録に到った理由の一つに真綿から引き出し、撚りをかけずに紡ぐ事(厳密には手引きの際にごくごく甘い撚りはかかる為、全く撚りがない訳ではない)にあったといいます。
無撚の糸取りがどれだけ特殊な事かかお分かり頂けるかと思います。

また靭皮繊維は折れやすいため、他の自然布産地では撚りをかけ補強としております。
しかしこの葛布にといては撚りではなく交織とすることで軽さと折れにくさ・しなやかさを実現しております。
現代では経糸に綿糸を多く用いますが、昔では絹・苧麻も用いられ、場合によっては経糸に撚りをかけ緯糸は平糸で織られている資料も存在します

ここで一つ写真をご覧ください、こちらは江戸期の葛布の道中着です。
葛布道中着-1
葛布道中着-2
葛布道中着-3

先程申し上げたように、江戸期において葛布は道中着に多く用いられておりました。
それは軽く、水を通しにくいため風除けや雨除けに用いられてきました。
いわば江戸時代のウインドブレーカーでしょうか。

無地に織りあげた葛布を藍染にしており、その輝きは画面ごしにお分かり頂けるかと思います。

形状は前で打ち合わせる被布状の衿となっており、木製の金具で留めております。
当時は旅行時において護身用に脇差を携帯することが認められており、左脇に空いている穴は刀の柄頭を出すためのもの。
昔の所有者はこの道中着を着てどのような旅路を行ったのでしょうか。

このように葛布はその素材の持ち味である光沢をいかに生かすかに特化した布であると言えるかもしれません。
また平糸の欠点を補うために交織という技法を用いることで軽さやハリ感を出していることも特徴として上げられ、昔の人はその素材や布が持つ特性をよく理解して活用しておりました。

古代織産地連絡会はこうした布達を未来へつなげる為活動を行っております。

今後の活動にどうぞご期待ください。

ライター : 宵衣堂 健太

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