太布
太布

日本列島に住む人々が何を身に纏ってきたか。
山野に自生する植物を上手く活用し、糸となし、布として身に着けてきました。
その最も古いものの一つがこの太布です。
その質感は麻に似たやや地厚のしっかりとした布ですが、その白さに特徴があります。
自然布の中では例外的に冬季に収穫し、その寒中に曝すことによりその白さを増します。
太布とはどんな布?
太布とは和紙の原料にもなる楮の皮を蒸し、その繊維を糸にし、布にしたものです。
かつては日本全国で作られていたようですが、現在は非常に山深い徳島県・木頭町周辺で生産されるのみとなってしまいました。
また穀(かじ)の木からも繊維をとり同じく太布として織られていましたが、加工の難しさから現在は楮のみを使っております。
自然布全般にも言えることですが、この布は山深い土地に住む人々が生活のために織り・使われる、実用本位な、まさに生活に必要不可欠な布でした。
主な用途としては衣料として使われ、労働着や着物として、またその強靭な強度から畳の縁や袋物・穀物袋としても使われておりました。
またその白さによるものか神主の装束も現代に伝わっております。
太布の歴史は平安時代までさかのぼります、直接太布という記述はありませんが、木綿(ゆう)という白い布が太布にあたり、日本書紀や延喜式などにその名が見られます。
また江戸時代の本居宣長が『玉勝間』の中で、
木綿(ゆう)は穀の木の皮であり、これで織った布が太布である。阿波では現在もこの太布が織られているが、色白く、丈夫で素晴らしいぬのである。
と紹介しています。
また古代においての木綿(ゆう)は現在の木綿(もめん)とは全く別のもので、同じ漢字でも指し示す内容が後世において変わってしまったようです。
- 12月から1月が収穫期、葉の落ちた枝を刈り取り専用のコシキで蒸しその後冷水をひきかけ急冷する。こうすることで作業がし易くなり元の方から先端部に向けてこそげ取ることができる
- 剥いで小束にした楮皮はすぐ灰水で煮る
- 煮上がると木槌で叩き、表皮の黒いオニカワを剥がす。そのご籾殻をまぶし揉みこんでなじませ一昼夜流水で晒しておく
- 流水から引き上げた楮皮は日の射さない野原に広げ三昼夜ほど表裏を返しながら凍らせ、その後小束にし軒先で乾燥させる
- 下拵えの出来た楮皮の末端部を二つに割り、その間に繊維をついで拠りつないでいく。このとき濡らした親指と人差し指で縄をなうように縒りをかけ一本の繊維にしていく
- 績んだ糸を湿らせ糸車で縒りをかけていく
このような工程を経ることで糸になり、そして太布として織られていくのです。
名称 | 太布庵 |
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URL | 太布庵Facebookページ |
【参考情報】
太布庵パンフレット